その日もよく晴れた日。
ゆうこさんは、ひとり、charaの昔の曲を口ずさみながら、床の掃除をしていました。
今日も誰かが来る予感がするなぁ。
ゆうこさんは、ぼんやりとそんなことを思っていました。
コンコンコン!!!
ほら、やっぱり。
ゆうこさんは、玄関へ向かいました。
ドアを開けると、そこには、白くて長いひげをたくわえた、なんとも立派な顔立ちをした
おじいさんが眉間にしわを寄せて立っていました。とてもビシッとした袴をお召しです。
「かたじけない!厠を貸してはもらえないか?」
おじいさんは言いました。心なしか、苦しそうです。
ゆうこさんは、にっこり笑って、快くお手洗いに案内しました。
ジャーーーーーーっ
おじいさんは幾分安心した様子で、お手洗いから出てきました。
お礼を言うものの、なんとなく帰りたくなさそうな気配だったので、ゆうこさんは、お茶をすすめてみました。
「いや。すまないね。お茶までご馳走になってしまって。でも、せっかくだから頂こうかな。
いや、私は隣町で、居合斬りの師範をしているもんなんだよ。
弟子も、たくさんおる。住み込みで修行をしており、毎日、厳しい修行をさせておる。
もちろん、わしも一緒にな。
今日は、弟子たちが休みを取って、みんな故郷に帰っておって、久々の一人の時間だっだんじゃ。
早歩きで足を鍛えようと歩いておったら、急に、その、そうゆうことで。
非常に助かったと言う次第で。ところでおじょうさん、独身かい?」
おじいさんは、難しい顔を維持しながら、唐突にゆうこさんにといかけました。
ええ。
ゆうこさんはにっこり笑って答えました。
コンコン(とても小さく)リーーーーン!
これは、ニシノさんが帰ってきた時の音です。
おじいさんは、ニシノさんが入ってきたのを見て、苦虫をかみつぶしたような顔をしながら一礼しました。
ニシノさんはおじいさんに微笑みを返しました。
手に、何やらカバーがかかった大きいものを持っています。
なんだか声もするような気がするし、少し臭います。
ゆうこさんは、嫌な予感がして、なんだろう、と思っていると、
ニシノさんが、カバーを外しました。
それは、一匹のさるが入った、大きめの鳥かごでした。
「いやぁ。ちょっと厄介ごとを抱え込んじゃった。
いつもいくあそこのホームセンターで、オイルを調合するためのスポイトを買おうとしてたんだよ。
そしたらさ、その奥にペットコーナーがあるじゃない?
そこにさ、なんとポケットモンキーが売られてて、なんかすごい怒られてるんだよ。
スタッフの人に。そしたらさぁ、おっかしいんだけど、このポケットモンキー、
自分のおちんちんをひっぱる癖があるらしいのね。
で、それをみたお客さんからクレームの嵐らしくて。
その現場を押さえて、スタッフの人が叩いたりして怒るんだけど、一向に辞めないのね。
でさぁ、、、
なんか可哀想になって、引き取ってきちゃったんだ。
安くしとくからって、スタッフのひとも安心してたよ。。。」
ニシノさんは、ゆうこさんの怒ったような顔を、困った様子で見つめました。
ゴホン!
おじいさんは咳払いをし、存在をアピールした後に、話しはじめました。
「それはいかん!あそこのホームセンターは幼稚園にも近く、子供達が母親に連れられて来る!
そんな汚いものを見せられたあかつきには、子供達は泣き、親たちは狼狽するであろう。
そもそもさるなら良いがな!子供達がそんなものに興味を持ち始めたら大変なことになる!
そのようなものは、煩悩につながり、集中力を欠き、そして時間の無駄になる!
それは、そこの従業員も、叩くのは仕方あるまいな。で、あんた、どうするんだ。
そんなもの持って帰ってきて。
このおじょうさんも、嫌そうにしておるじゃないか。」
ニシノさんは、ところでこの立派なおじいさんは誰なのかなぁと思いながら、
鳥かごでは可哀想なので、部屋に出してあげることにし、そーーーーっと扉を開けました。
ポケットモンキーは恐る恐る外に出て、やはり、
そこの床に寝そべって、おちんちんを引っ張りはじめました。
「こら!この薄汚いサルめ!わしがしつけてやる!」
おじいさんは、立ち上がり、そのさるに近づこうとしましたが、
ニシノさんはおちんちんを引っ張ったままのポケットモンキーを、
優しく抱きかかえ、頭を撫でてやりました。
ポケットモンキーは最初は抵抗の様子を見せましたが、すぐに、おちんちんから手を離して
安心したように、ニシノさんの腕にしがみつきました。
「まぁー、とりあえず、ご飯にしましょう。」
ゆうこさんはそう言って、残り物の野菜と鶏肉を使って、鍋の準備をはじめました。
準備ができる間に、ニシノさんは上物のお酒と、三つのグラスを準備しました。
そのお酒は、とても美味しく、おじいさんは、久しぶりに酒を飲んで、少し柔らかい気持ちになってきました。
ご飯を食べていたゆうこさんはびくっとしました。
気が大きくなったおじいさんが、ゆうこさんの太ももを触っています。
ニシノさんはポケットモンキーと遊びながら食べていて、気づいていません。
ゆうこさんは平気な様子で、太ももにある、おじいさんの手を優しく握ってあげました。
そんなこんなしているうちに、おじいさんは酔っ払ってソファーまで自分で行って寝てしまい、
ニシノさんはおじいさんに毛布をかけてあげながら、ポケットモンキーの名前を考えていました。
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