白熱の談義。

ゆうこさんとニシノさん

その日はいまにも雪が降り出しそうな寒いお天気で、

 

ゆうこさんも震えながらコートを脱ぎ、

 

ガスストーブの前で足と手を温めていました。

 

おばあちゃんはむっつりとしたまま、ソファーではなく座椅子に座り、出てきた日本茶をすすっていました。

 

先ほどまでポカーンとゆうこさんとニシノさんのやりとりを見ていた髪の長い女の人は

 

まるで、別人になったかのように、おばあちゃんに話しかけました。

 

「おばあちゃん。大丈夫よ。私もあなたもね、心が綺麗だから、こんな優しい方達のところへ寄せていただいてるの。

感謝をしなくちゃね。そんな、怖い顔をしていては、幸せは訪れないのです。

よろしかったら、こちらのパンフレットの一行目をご覧いただけます?あ、見えますか?

わたくし、読み上げて差し上げましょうね、、えと、、かみさまはみn、、、、」

 

バアアアン!!!!!

 

おばあちゃんは、どこに隠し持っていたのか、折りたたみのつえを如意棒のように伸ばして、

机を思いっきり叩きました。

 

そこにいる全員が、びっくりして、言葉を失ってしまいました。

 

しかしまず、髪の長い女の人が、

 

「まぁおばあちゃん。そんなになるまで、我慢していたのね。かわいそうに。

でも、もう大丈夫ですからね。かみさまは、どんな人でも救ってくださるのですから。

さ、まず、怒り、を手放すためのお祈りを教えて差し上げましょうね。まず、、、」

 

 

バアああああああん!!!

 

さっきよりすごい力で、おばあちゃんは、テーブルを殴りつけました。

そして、髪の長い人を思いっきり睨みつけ、

 

「お前にわしの何がわかるか!この偽善者め!!!

そうやってなぁ、耳当たりのいいことばっかりほざきよってからに!!!!!

あんたは子供おるんか!?母親はおるんか!?

ほぅ。おらんとな。やっぱりな!

そんなこと人に言うとる前に、自分の家族のことキチーーーンとしとれ!このたわけが!」

 

と、なかなかに迫力のある声で、言い放ちました。

 

髪の長い女の人は、もともと白かった顔が、まるでくしゃくしゃにしてもう一度広げたコピー用紙のようになって、焦点の合わない目でおばあちゃんを見つめていました。

 

ゆうこさんとニシノさんは、この一連のやりとりを眺めながら

 

テーブルの下でこっそりと手を握り合っていました。

 

おばあちゃんは続けます。

 

わしはなぁ!家族に捨てられとんじゃ!

娘もなぁ、そんなんゆうて、人にはいい顔してからに、

わしには忙しい忙しいゆうて知らん顔じゃ!!!

孫もわしに寄り付かんし!猫までわしに寄り付かんから、杖で叩いたろうおもとる!

けど猫は素早いから逃げてしもうた!あんな家族おらんほうがましじゃ!!

わしがキチーンと育てちゃったに、なーーんも覚えとらせん。ふんっ。

あんたも子供を産んでたらそんな綺麗事言えるかやって見たらええわ。もう無理だろうがの!!!

 

 

バアアアアアアアアアン!!!!!!

 

今度は、くしゃくしゃのコピー用紙に、般若のような落書きをした顔になった髪の長い女の人が

持っていたパンフレットを、テーブルに叩きつけました。

冷たくなったコーヒーが入っていたカップが倒れ、パンフレットは台無しです。

 

黙って聞いてりゃこのくそ老いぼれが!

あんたみたいなくそババア捨てられて当たり前だろうが!!

 

でもなぁ!

私に比べりゃ幸せなんだよ!

私はなぁ!わたし、、わ、た、、、し、、、、

 

 

わたしだって、子供が欲しかった。

 

 

髪の長い女の人は、ガクッと肩を落とし、しくしくと泣き始めました。

 

「ひたすらに、かみさまの使命を果たすため、この身を捧げてきたんです。

たくさんの人が、おかげで救われました。とわたしに言ってくれたんです。

でも、わたしは空っぽなんです。

こんな、汚いしわくちゃのおばあちゃん(ここで、バン!と如意棒)ですら、

文句を言える子供や孫がいるじゃないですか。

わたしは、、、、、、

 

ほんとに空っぽなんです。」

 

ゆうこさんとニシノさんは、テーブルの下で握り合っている手を、

お互いにぎゅっ、と、もう一度握りしめました。

 

そうすると、今度はおばあちゃんも、しくしく泣き始めました。

 

「あんたもなぁ、辛かったろうになぁ。

いきおいにまかせてあんなことゆうて堪忍してやぁ。わしやってなぁ。

あんたまだ若いやろが。羨ましいんじゃ。

まだまだこれから自分のやりたいことができおろうが!!!

さぁ!そんな汚いパンフレットこの人たちに捨ててもろうて、なんか好きなことせんか!

ナンパ待ちでもしてこんか!あんたまだまぁ、、30代前半には見えんこともないやろ!」

 

と、髪の長い女の人を励まし始めたのです。

 

ゆうこさんとニシノさんは、つないで少し汗ばんだ手を解いて、にっこりと笑いました。

 

「いや、なんかよくわかんないけど、いい出会いでしたね。」

 

ニシノさんは言いました。

 

髪の長い女の人は、コピー用紙ではなく、無表情だけど、でも、いくぶん人間味のある顔で、

ニシノさん、ゆうこさん、そして、おばあちゃんに一礼し、玄関から、帰っていきました。

 

ゆうこさんは、テーブルを拭き、しっとりしてしまったパンフレットをゴミ箱に捨てました。

 

「さぁおばあちゃん、どうします?住所わかります?」

 

こっくりとうなずいたおばあちゃんは、ニシノさんのブルーのバイクの後ろに颯爽とまたがり、

 

見送るゆうこさんに手を振って、来た道とは逆の方向へと、走って行きました。

 

ソファーのある部屋に戻って来たゆうこさんは

おーさむ。

と言いながら、またガスストーブの前に座り込むと、

テーブルの下に、おばあちゃんの如意棒が落ちているのを発見しました。

 

「あ、参ったなぁ。」

 

そう呟いたゆうこさんでしたが、

とりあえずニシノさんの帰りを待とう、と、

 

お風呂を沸かすことにしました。

 

 

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