次の日の朝。
しとしとと雨が降っています。
ゆうこさんはしあわせな気持ちで、キッチンに立ち、朝食の準備をはじめます。
ねぼすけなニシノさんのために、
起きた時すぐ飲めるように、
あったかい栄養満点のミネストローネを。
ゆうこさんは味の決め手になるハムを冷凍庫から出して解凍し、
冷蔵庫でしにかけていた野菜たちをどんどん角切りにします。
トントントン。。。
その音を聞きつけて、ニシノさんが上の階から寝ぼけまなこで降りて来ました。
キッチンのゆうこさんにニッコリと微笑みかけたのち、
カップにルイボスティーを作って、飲みながら窓際で雨を眺めています。
ゆうこさんがいない間に、ネスプレッソは、イアイを預かっていてくれた女の人の譲ったのでした。
(ついでにポケットモンキーのイアイも、彼女と分かち難く絆ができていたため、そこの家の子になりました。)
実はニシノさんはいつもコーヒーの飲み過ぎでお腹を壊していたのでした。
あぁこんな日常が
すごくうつくしい。
そんなことを思いながら庭を眺めていると、
スイセンの咲く植え込みの中で、
ぶいぶいと、二匹の虫たちが動いているのが見えます。
★
ぶいぶいぶいぶい
たまむしくん: おい!お前!その花は俺のじゃないか!どけよ!
まるむしくん: はーなにゆうとんねん。俺のもクソもあるかいな。
イマちょうどこのお花ちゃんは美しく咲いてはんねん。
俺がこちょこちょしたったらええやないの!ほら!ええ香りで誘って来てるでー
たまむしくん: おい!何を言ってるんだ!
俺が先に見つけて、その花に、ずっと俺だけの花でいてくれ!って約束したとこな
んだよ!それがなんだ!お前にもいい香りを振りまきやがって!あばずれの花め!
まるむしくん: えーそんなんゆうの?好きやったんちゃうんか?
それが、他のむしと仲良くしてるからって、あばずれなんか言うんか?
そんなお前のことを、この花ちゃんは、好きになるもんかね?
だいたい俺はな、この花ちゃんが好きな栄養分を知ってんねん。
それをな、せっせと俺の体で作り出して、花ちゃんに毎日おすそ分けしてるんや。
ほら、だから花ちゃん、前よりも茎がふとなって、もっと綺麗になったやろ?
お前なーそれをあばずれて。そら嫌われるわ。
たまむしくん: なっ。。。。
たまむしくんは何も言い返せず、したを向き、ブイーーーーンと、雨の中、
どこかへ飛んでいってしまいました。
まるむしくんは、また、自分の仕事に戻り、
スイセンの花が好きな栄養分を作り出しては、
彼女の根っこの近くに置いてやりました。
その一輪のスイセンは、
雨の雫を身に纏いながら、
とてもしあわせそうでした。
★
できたーーーーっ。
どうやらゆうこさんがミネストローネを完成させたようです。
スイセン、綺麗だね。
ミネストローネ、美味しいね。
雨、いつまで降るのかな。
そんなたわいもない会話を、
二人とも
いちおくえんかかっても買えない宝石のように
大切に
大切に
手のひらに乗せ
そのうつくしい時間を
ただただ
共有していたのでした。
コメント