むしたち。

ゆうこさんとニシノさん

次の日の朝。

 

しとしとと雨が降っています。

 

ゆうこさんはしあわせな気持ちで、キッチンに立ち、朝食の準備をはじめます。

 

ねぼすけなニシノさんのために、

 

起きた時すぐ飲めるように、

 

あったかい栄養満点のミネストローネを。

 

 

ゆうこさんは味の決め手になるハムを冷凍庫から出して解凍し、

 

冷蔵庫でしにかけていた野菜たちをどんどん角切りにします。

 

トントントン。。。

 

 

その音を聞きつけて、ニシノさんが上の階から寝ぼけまなこで降りて来ました。

 

キッチンのゆうこさんにニッコリと微笑みかけたのち、

 

カップにルイボスティーを作って、飲みながら窓際で雨を眺めています。

 

ゆうこさんがいない間に、ネスプレッソは、イアイを預かっていてくれた女の人の譲ったのでした。

(ついでにポケットモンキーのイアイも、彼女と分かち難く絆ができていたため、そこの家の子になりました。)

実はニシノさんはいつもコーヒーの飲み過ぎでお腹を壊していたのでした。

 

 

あぁこんな日常が

 

すごくうつくしい。

 

そんなことを思いながら庭を眺めていると、

 

スイセンの咲く植え込みの中で、

 

ぶいぶいと、二匹の虫たちが動いているのが見えます。

 

 

 

ぶいぶいぶいぶい

 

たまむしくん: おい!お前!その花は俺のじゃないか!どけよ!

 

まるむしくん: はーなにゆうとんねん。俺のもクソもあるかいな。

イマちょうどこのお花ちゃんは美しく咲いてはんねん。

俺がこちょこちょしたったらええやないの!ほら!ええ香りで誘って来てるでー

 

たまむしくん: おい!何を言ってるんだ!

俺が先に見つけて、その花に、ずっと俺だけの花でいてくれ!って約束したとこな

んだよ!それがなんだ!お前にもいい香りを振りまきやがって!あばずれの花め!

 

まるむしくん: えーそんなんゆうの?好きやったんちゃうんか?

それが、他のむしと仲良くしてるからって、あばずれなんか言うんか?

そんなお前のことを、この花ちゃんは、好きになるもんかね?

だいたい俺はな、この花ちゃんが好きな栄養分を知ってんねん。

それをな、せっせと俺の体で作り出して、花ちゃんに毎日おすそ分けしてるんや。

ほら、だから花ちゃん、前よりも茎がふとなって、もっと綺麗になったやろ?

お前なーそれをあばずれて。そら嫌われるわ。

 

たまむしくん: なっ。。。。

 

 

たまむしくんは何も言い返せず、したを向き、ブイーーーーンと、雨の中、

どこかへ飛んでいってしまいました。

 

まるむしくんは、また、自分の仕事に戻り、

スイセンの花が好きな栄養分を作り出しては、

彼女の根っこの近くに置いてやりました。

 

その一輪のスイセンは、

雨の雫を身に纏いながら、

 

とてもしあわせそうでした。

 

 

 

 

できたーーーーっ。

 

どうやらゆうこさんがミネストローネを完成させたようです。

 

スイセン、綺麗だね。

 

ミネストローネ、美味しいね。

 

雨、いつまで降るのかな。

 

 

 

そんなたわいもない会話を、

 

二人とも

 

いちおくえんかかっても買えない宝石のように

 

大切に

 

大切に

 

手のひらに乗せ

 

そのうつくしい時間を

 

ただただ

 

共有していたのでした。

 

 

 

 

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